【現代語訳】摩訶般若波羅蜜多心経

2018年01月13日 / 【現代語訳】曹洞宗のお経

『摩訶般若波羅蜜多心経』現代語訳


偉大なる智慧の完成についての心髄の経

観自在菩薩が深遠なる智慧の完成を実践していたとき、もろもろの存在の五つの構成要素は、皆、固有の本性・実体を持たない「空」であると見極め、だからこそ、あらゆる苦しみと災いを克服した。

舎利子よ、形あるもの(色)は、空に異ならず、空は、形あるものと異ならないのである。形あるものは空であり、空は形あるものなのである。そして、感受作用・表象作用・形成作用・識別作用もまた、同じく空なのである。

舎利子よ、あらゆる存在は空を特質としているから、生じることも滅することもなく、汚れることも清まることもなく、増えることも減ることもない。だからこそ、空であることには、形あるものは存在せず、感受作用・表象作用・形成作用・識別作用も存在しない。眼・耳・鼻・舌・身体・心も存在しない。これらの感覚器官の対象である形・音・香り・味・触れられるもの・心の対象の法も存在しない。範疇としての眼から、意識にいたるまでの十八界もない。智慧が無い状態もなければ、智慧が無い状態も尽きることもない。また、老いて死ぬこともなければ、老いて死ぬことが尽きることもない。苦・集・滅・道という四諦もない。知ることもなければ得ることもない。

得るところのものが何もないからこそ、菩薩は智慧の完成に依るのであり、心には妨げるものがなく、心に妨げるものがないからこそ、恐怖があることもない。誤った考えや夢想を超越して、涅槃を究めるのである。また、過去・現在・未来の諸仏も、智慧の完成に依るからこそ、無上なる完全なさとりを得るのである。

だからこそ知るべきである。般若波羅蜜多とは、大いなる真言であり、大いなるさとりの智慧の真言であり、この上ない真言であり、比べるものがないほど素晴らしい真言なのである。よく一切の苦悩を除き、それは実在であり、虚ろなものではないのである。

だからこそ、般若波羅蜜多を讃える真言を、ここで説こう。

往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、さとりよ、幸いあれ。

偉大なる智慧の完成についての心髄の経

訳文提供:菅原研州師

 

【参考文献】

面山瑞方禅師『般若心経聞解』吉祥林蔵版・一八二七年
曹洞宗宗務庁監修『えんぴつで般若心経』ポプラ社・二〇一五年
中村元・紀野一義訳註『般若心経・金剛般若経』岩波文庫・一九六〇年
宮坂宥洪『真釈般若心経』角川ソフィア文庫・二〇〇六年
竹村牧男『般若心経を読みとく』角川ソフィア文庫・二〇一七年